麻倉怜士氏の新書に『やっぱり楽しいオーディオ生活』という本があって、とても読みやすい。
146ページに次のような記述があったので、紹介したい。
引用開始−−−−−−−−−−−−−−−−−
評論家としての長いスピーカー試聴の歴史の中で、私に身震いさせた製品が二つあります。
ひとつが、私の常用スピーカーの三代目のプロジェクト製品である、K2・S9500です。
購入したのは1991年なので、もう16年も前の話です。
初めて聴いた時、度肝を抜かれました。
音が、波面を描きながら音場空間に濃密に広がっていく様が、目で見えたからです。
音の立上がりのピークが鋭く、音の小波大波がリアルな振幅をともなって、部屋の空気を振動させる様子が衝撃的でした。
クラシック音楽からポップス、シャズまで、ソースに合わせ、その世界を深く耕し、深く聴かせる類い希なる表現力に私は、惚れ込んだのです。
その思いと印象は、16年経ったいまでもまったく変わっていありません。
引用終了−−−−−−−−−−−−−−−−−
いったいそんなことがあるのか?
って思うでしょ! いかにわかりやすい記述を心がけているとはいっても、いくらなんでも・・・・・・。
JBL Project EVERESTシリーズには【DD−一万番台】の製品コードがついている。それはここで紹介したとおり。
今回のJBL Project K2シリーズは、このEVERESTのラインナップとは一線を画し、バーチカル・ツインのウーファーを搭載。S9500をハイエンドモデルとして製品群が構成された。
「脚」の部分はコンクリート!
評論家である麻倉氏もそのハイエンド機であるS9500を自宅に据えていたのである。様々なセッティングを試み、よりベターな(なかなかベストには近づかない!?)状態にする行為自体が楽しみであるマニアは、相手が難敵(ハイエンド機)であればあるほど、それへの闘志(よりよい音を求める気持ち)で、「あ〜でもない、こ〜でもない。」と周辺機器(コードとか・・・・)に投資してしまう(ものらしい)。
中にはエンゲル係数ならぬオーディオ係数(?)が、どうみても収入を上まわり人生を踏み外している人も散見される(という)。
いくら優先順位の問題とはいえ、明らかに狂っている! もう一度書きます。狂ってる!
そんな人々を反面教師としてバランスある、そして良識あるマニア(もともとマニアには良識など・・・・ない)になるべく、私は過ごしているのであるが、前述の麻倉氏の引用文を読んで、クラクラ・・・・・・・ときてしまった。
2006年に発表されたDD66000はJBL創立60周年記念であったこともあり、その年にはJBL関連本が何冊も出版されていた。ステレオ・サウンド誌でも別冊で『60th Anniversary JBL』を出版していて、【JBL社の歴史(=製品年表といってもよい)】がわかる内容であった。
そこでS9500をみると、【S9500、S7500、S5500】と並ぶ製品群の中に、【M9500】が存在した。
バーチカル・ツインの基本構造は変わらない。
現行製品であるS4800、S3800等に連なる(と思われる)頭の【S】はコンシューマー向け(=一般消費者、市場投入型)を表すものである。
しかし、JBLにはこのラインとは別にスタジオモニター向けシリーズがあり、アルファベットがつかず、コード番号だけで呼ぶ製品も多い。
スタジオモニター向けだとはいっても、一般人が購入することも可能なわけで、特に日本では1970年代から80年代にかけて“4343”からその後継機種“4344”が一般消費者に爆発的に売れた、そんな歴史がある(かくいうわたしも、実家に“4343B”がある)。
構造的にはS9500と同じ設計コンセプトで作られているが、本体容積の増量+ネットワークの外箱化となっているM9500は、頭の【M】が示すとおり“Monitor”用として開発されたものである。
JBLとしてはS9500をコンシューマー用、M9500をスタジオモニター用に開発・販売を開始する。
しかし、ここで明暗が分かれることとなった。
S9500=明、M9500=暗という結果である。
S9500はハイエンド機ながらも一般消費者に受け入れられ、メーカーとしては商品コンセプトの確立(K2シリーズ)と販売実績という果実を手に入れることができた(だいぶ売れたらしい)。
現在もK2シリーズのバーチカル・ツインはS5800が現役として、ラインナップに名を連ねている(現行のハイエンド機S9800SEはバーチカル・ツイン方式ではなくなっている。
・・・噂では、あくまで噂ですが・・・・・、
@ キノシタ・モニター(レイ・オーディオ)から圧力がかかったとか→「真似しただろ!」
A JBL側が配慮したとか→「ハイエンド機に他社と似たものを置いておくのはいかがなものか・・・・・。」
との話を聞いた。真相は・・・・・??????
一方、M9500はその巨大さ故、導入を控えるスタジオが多かったらしい。
なんせ重さ137kg(本体)+ネットワーク8kg
縦140cm*横64cm*奥52cm
という大型冷蔵庫並のサイズが2本なのですから・・・・。
わずか(?)ではあるがM9500を導入したスタジオがあった。ここである。
そんなM9500が我が家に到着した。
3分割され上のウーファー+真ん中のホーン・ツィーター+下のウーファー+外箱化したネットワークで構成されている。
とにかく「でかい!」
3ブロックを積み上げて完成。
ネットワークは「外付け」
予め設置場所のサイズを測っておいたのでスペース的には収まることは収まった。
しかし、心配がひとつあった。
それは「重さ」である。昭和40年代に建てられた現住居は、2本で280kg+その周囲の重さも加わると優に350kgは超えている。床が抜けないだろうか?
これがいちばんの心配なのだった。
知人から「本が多すぎて住宅の床が抜けた。」とか「家が傾いた。」「床が斜めになってしまった。」という話を、まことしやかに聞いたことがある。
私も若い頃、1ヶ月3000円の家賃の家に住んでいたとき、1ヶ月1500円の方の家に伺ったことがある。襖を閉めると下は柱にピタッと付いているのに、上は3〜4cmも空いていた。そんなところもあれば「さもありなん。」である。
今のところも、そんな恐れがある住宅なのだ。
枚方市の“Blue Lights”の奥村さんにしても(今はなき)桑名市の“どじはうす”の脇田さんにしても、家を造るとき土台からしっかりとスピーカーの下だけは特別に設計されていた。
本当に大丈夫なんだろうか、私のこの住宅のこの場所で・・・・・・?
(2008年2月現在、まだ大丈夫)
そんなヒヤヒヤ感を感じさせない鳴りっぷりをどう表現したらいいのか?
まだまだ工夫の余地があちこちにあると思われるものの、とりあえずは「朗々と鳴っています」とだけ書いておきます。
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基礎データ
“1400Nd”14インチウーファ*2
“475Nd”ドライバー
“H9500”バイラジアルホーン
クロスオーバー周波数650Hz
素材に“Nd”=ネオジウムを使用しているところがポイント。